2021年 8月12日(木) ~ 2021年 8月16日(月)まで夏季休暇を頂きます。
よろしくお願い申し上げます。
国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2021年分の路線価(1月1日
時点)を公表した。
全国の平均変動率は前年比マイナス0・5%で、6年ぶりに下落した。新型コロナ
ウイルスによるインバウンド(訪日外国人客)需要の消失や、飲食店への営業自
粛・営業時間短縮要請の影響で観光地と商業地で下落傾向が顕著に表れた。
都道府県別では、39都府県が前年から下落した。東京(マイナス1・1%)と
大阪(同0・9%)は8年ぶり、愛知(同1・1%)は9年ぶりに下落し、株高の影
響で地価が安定していた大都市圏も下落した。上昇したのは、福岡(プラス1・8
%)、宮城(同1・4%)、北海道(同1・0%)など7道県で、昨年(21都道府県)
の3分の1にとどまった。
都道府県庁所在地の最高路線価の下落率(前年比)は、奈良市が最大でマイナ
ス12・5%。神戸市同9・7%、大阪市同8・5%、盛岡市同8・0%、東京都中央
区同7・0%と続き、22都市で下落した。
横ばいは17都市。上昇したのは8都市で、上位は仙台市プラス3・8%、千葉市同
3・5%、宇都宮市同3・4%の順だった。
全国に524ある税務署別の最高路線価では、下落率が最も大きかったのは、大
阪市の繁華街・ミナミの中心部に位置する中央区心斎橋筋2(心斎橋筋)のマイ
ナス26・4%。外国人観光客の多い飛驒高山の岐阜県高山市上三之町(上三之町
下三之町線通り)の同12・7%、奈良公園に近い奈良市東向中町(大宮通り)の
同12・5%と続いた。上位10地点のうち5地点が大阪府内だった。
東京は浅草寺に近い台東区浅草1(雷門通り)が昨年のプラス33・9%から下
落に転じ、マイナス11・9%と最も下落した。東京・銀座の文具店「鳩居堂」前
は1平方メートル当たりの価格が4272万円と36年連続で日本一だったが、前年比
は同7・0%だった。 昨年プラス50・0%と6年連続で全国トップの上昇率だっ
たスキーリゾート地の北海道・ニセコは、コロナの先行き不透明感から不動産取
引の停滞もあり、0・0%で横ばいに。昨年プラス40・8%だった那覇市の国際通
りはマイナス1・4%と下落に転じた。 「毎日新聞」
「人生最大の買い物」と言われている住宅(マイホーム)は、多くの人が ローンを組んで購入しますが、最近はコロナ禍の収入ダウンによる”住宅ロ ーン破綻”がマスコミで取り沙汰されるようになっています。
そもそも、国内における住宅ローンの貸出残高はどれくらいあるのでしょう か。住宅金融支援機構の貸出し分を除いた、いわゆる純粋な金融機関による 貸出残高は約185兆円と見られます(2020年3月末、四半期で変動あり)。さて、こうした住宅ローンの破綻率はどれくらいだと思いますか? 結論から先に言うと、2%~4%です(参考資料:NPO法人「住宅ローン問題 支援ネット」、以下同)。金額にすると3.7兆円~7.4兆円です。少し幅が広 いのは、当該業界(主に金融機関)から正式データが公表されていないこと、 そして競売の範囲が広いためと見られます。 それでも、この公表値に基づけば、破綻率はザックリ約3%、金額にすると 約5~6兆円となり、かなり大きな金額です。 さらに、ここでいう「破綻」とは、単に返済が数カ月滞っているというレベ ルではなく、完全に“事件扱い”された案件が対象です。この“事件扱い”とは、 返済不能に陥ったため、(住宅ローンの対象である)住宅が競売に掛けられ たり、任意売却を迫られたりした案件を指します。 競売は裁判所から情報公開され、任意売却は信用機関のブラックリストに載 ります。事実上、世間に“住宅ローンが返済できませんでした”と公表するこ とになり、多くの場合は自己破産の申請を余儀なくされます。 また、こうした“事件扱い”には至っていないものの、長期間の滞納や将来の 返済困難に陥った事例など、いわゆる“破綻予備軍”は前述した破綻件数の3 倍程度あると見られています。つまり、既に破綻済みの分を除いても、約 10兆円がいつ焦げ付いても不思議ではないということです。 ちなみに、住宅に次ぐ高級消費耐久財である自動車の場合、前述した“事件 扱い”と同じレベルの自動車ローン破綻比率、つまり、返済不能でクルマを 強制差し押さえされるレベルは0.3~0.5%程度と見られます。金額やロー ン期間が異なるので一概に単純比較はできませんが、住宅ローンの破綻率 の高さが理解できましょう。
そもそも、住宅ローンを組む際(金融機関から見ると貸し付けの際)厳 格な審査が行われているはずです。確かに、一昨年に大きな社会問題と なったスルガ銀行の不正な過剰融資事件など、個人向け融資を伸ばそう とする金融機関は増えてきました。 それでも、低所得層など返済が滞る懸念がある人に、最初から住宅ロー ンの融資する可能性は低いはずです。本来ならば、3%とか4%の破綻比 率は考え難いのです。しかしながら、現実には住宅ローンの返済に困窮 する債務者は後を絶ちません。 その要因として、住宅ローンを組んだ後に、外的要因(自営業者の会社 経営不振、投資運用失敗、ギャンブル等の浪費)、健康問題(病気、ケ ガによる収入減)、職場問題(リストラ、転職の失敗、退職金の減額) 家庭問題(離婚、介護、年金減額)などによって、借入債務者の財政状 況が大きく悪化することが挙げられます。 しかも、返済が順調に進んでいたにもかかわらず、気が付いたら返済困 難に陥ってしまっていたケースが少なくないようです。今回の一連のコ ロナ禍の影響で住宅ローン返済計画が大きく狂った人も少なくないはず ですが、1年前には全く予想していなかったことだったのではないでし ょうか。
住宅ローンの返済が滞り、いよいよ破綻が迫った時、多くの債務者が“最 後の一手”として考えるのが売却による返済です。つまり、今現在住んで いる自宅を売却して、その売却金額を返済に充てるというものです。しか し、そうは問屋がおろさない場合があるのです。 最大の理由は、その自宅に(金融機関の)抵当権が設定されているからで す。抵当権が設定されたままでは不動産を(勝手に)売却できません。 自宅の売却には金融機関の許可が必要になります。 ここで重要になるのが、「アンダーローン」と「オーバーローン」という 状況です。簡単なモデルで考えてみましょう。 たとえば、何らかの理由(リストラや病気、今回のコロナ禍等)によって 収入が激減し、住宅ローン残高3,000万円の返済が難しくなったとします。 この時、自宅の評価額(=市場取引額。相続税評価額ではない)が3,500 万円の場合、金融機関は抵当権を抹消して売却を承諾するでしょう。なぜ ならば、金融機関は残額3,000万円を回収できるからです。これが「アン ダーローン」です。 しかし、もし自宅の評価額が2,500万円の場合、単純に売却しても金融機 関は残債3,000万円を回収することはできず、▲500万円の不良債権が発 生します。 金融機関は、この不足分▲500万円の返済を繰り延べたり、新たなローン として設定したりするような生ぬるいことはしません。自宅は強制的に競 売に掛けられ、自己破産を迫られます。あるいは任意売却の手続きが取ら れますが、いずれにせよ抵当権設定者である金融機関の主導で行われます。 これを「オーバーローン」と称します。“まさか、そこまではしないだろ う”、“一定の猶予期間はあるだろう”という希望的観測は甘いと言わざる を得ません。
こうした「オーバーローン」に陥る可能性を少しでも低くするためには、 常日頃からローン残高と自宅の評価額を把握しておくべきでしょう。自 宅の評価額に関しては、様々なサイトで大まかな額を調べることが可能 です。 ただし、この評価額(=市場取引額)は、買い手と売り手の需要で決ま りますから、投資家のニーズ、大きな経済変動、自然災害などで常に変 動します。 特に、最後の自然災害による影響は、一定のタイムラグを置いてから表 面化するため注意が必要です。ある日調べてみたら、自宅の評価額が考 えていた以上に下落していることは決して珍しくないのです。 住宅ローンの返済が順調に進んでいて、この先も滞る懸念がないならば こうした心配は無用です。 しかしながら、前掲の既に破綻した2~4%の借入債務者も、最初から破 綻のリスクに直面していたわけではありません。ある日気が付いたら、 住宅ローンの返済が困難に陥っていたというパターンが多いのです。そ して、これは破綻済みの3倍程度いると見られる破綻予備軍も同様です。 何の懸念もなく順風満帆な人でも、ぜひ一度調べて見てください。今回 のコロナ禍のような危機が突然やって来ても対処できるように。
「LIMO LIFE&MONEY」
何かと先行きが見通せないご時世、なるべく支出を抑えたいと考える人は多い
だろう。
残業代が稼げない、ボーナスもカットされた、売り上げがピンチだ、雇い止めに
あったという人もいるかもしれない。 だが、無情にもやってくるのが「請求」
だ。電気・ガス・水道などの公共料金使用したクレジットカードの請求、固定資
産税などの税金…これだけでもうんざりするのに、サービスを享受している実感
のない利用費まで請求されるから、やりきれない。
その代表例が、マンションなどの「管理費等」である。
公共料金が改定される際は、基本料金と従量料金の算定方法となる通知が郵送
などで届くことが一般的だ。選択の余地がないわけではないが、電力会社やガス
会社が一方的に決めた料金体系に従うしかない。
一方で、どれだけ使ったかで料金が決まる以上、当然のことながら節約の方法
はいくらでもある。では、同じように固定費として扱われることが多い、マンシ
ョンの管理費等はどうだろうか。
もちろん、管理費等の変更がある際は、部屋のタイプに応じて、何月の支払いか
ら、いくら増減しますという通知は届く。
しかし、何に使われているか、一言一句、入居時などに説明されたことがある
人はほぼいないと言っていい。あったとしても、契約時や入居時はほかの説明な
ども多く、管理費等の使用用途まで、考えを巡らせた人は少ないだろう。
そもそも管理費とは、文字どおりマンションの管理・維持に使われている。
たとえば、共用部分の電気や水道など経常的に生じる経費、管理組合が加入して
いる保険料、なかでも管理会社に支払う管理委託費は大きな支出を伴う。
この管理委託費のなかには、一般的に総会・理事会などに出席するフロント担
当者の費用や管理員の給与、エレベーター、消防用設備等の点検費用、定期清掃
代などが含まれている。
管理委託費は、マンションの規模や設備の種類、数によっても変わるが、戸当
たりに換算すると月額13,000円~15,000円前後が相場とされる。
また平成30年度マンション総合調査によると、駐車場使用料等からの充当額を
含む管理費の1戸あたりの平均は月額15,956 円とされ、総戸数が大きくなるほど
低くなる傾向にある。また、単棟型では 16,213 円、団地型が 14,660 円となっ
ている。
駐車場使用料等からの充当額を除くと、月額の戸当たりの管理費の額の平均は
10,862 円。 形態別では、単棟型が 10,970 円、団地型が 10,419 円である。
つまり、毎月コツコツと支払っている管理費のうち、管理会社へ支払う管理委
託費が占める割合がいかに多いかお分かりいただけるだろうか。
また、修繕積立金とは、大規模修繕工事を実施する際に必要となる多額の費用
を確実に確保するため、管理費とは別に毎月積み立てるものをいう。大規模修繕
は、数千万円から数億円規模のお金がかかるので、将来に備えてコツコツと積み
立てているわけだ。
外壁補修、屋上等の防水工事、鉄部塗装、給排水管の取替えなど、一定年数
の経過ごとに計画的に行う修繕や、不測の事故その他特別の事由の修繕などに
使われる。
そしてマンションでは、その施設やサービスを使用する人だけが負担すると
いうパターンの使用料もある。
具体的に言えば、駐車場や駐輪場を使用する人が負担する「駐車場使用料」
「駐輪場使用料」のほか、専用庭(1階部分の区分所有者が使用できる庭)がある
住戸の人が毎月の使用料を負担することもある。
タワーマンションなどでは、ゲストルームやスパ、ライブラリーなどの施設
の使用料の負担があることもよくある。これら管理費や修繕積立金などを総称
して「管理費等」と呼ばれる。
そもそも、管理費等の負担額は、それぞれのマンションの管理規約や使用細
則が根拠になっていることが多い。もし管理組合の収入が潤沢であれば、理事
会などで検討をして総会の決議を受けることで「一定割合の値下げ」または「
一定期間徴収をしない」といった措置をとることも可能だ。
実際に、とあるマンションでは、新型コロナの感染拡大で職を失うなど、生
活苦が続く区分所有者が多くいるとの声に、組合員にアンケートを実施し、総
会決議のうえ修繕積立金の徴収を1年間廃止するという運営をしている管理組
合も存在する。
また、マンションの管理費は、地域差がかなり大きい。国土交通省が公表し
ている平成30年度マンション総合調査のデータによると、関東が最も高く月額
12,149円。最も低い中国四国では月額9,210円と、月額にしておよそ3000円、
年間では36,000円もの差がある。
では、各マンションの「管理費等」の根拠はどうだろうか。
各区分所有者が所有する部屋の広さ(専有部分の床面積の割合)に応じて管理
費等が設定されているマンションが多い。管理費等を多く支払っているからと
いって、税率のように負担割合の利率は変わらない。
負担割合の利率が変わらないことは一見、公平に見えるが、使用頻度を考え
ればそうではない。
たとえば、70戸の高級マンションに、40平米1LDKにご夫婦で住むAさん宅と
70平米3LDKに家族4人で住むBさん宅があるとする。
このマンションでは、24時間無料で使用できるスポーツジムが共用施設に
あり、Aさん宅はご夫婦でほぼ毎日のように館内のスポーツジムを使用する。
Bさん宅は、週に1度ご夫婦で利用するかしない程度だという。
「平成30年度マンション総合調査」によると、戸数51~75戸の管理費の月
額戸別は、10,386円1平米当たりの月額管理費は137円とされる。それから計
算すると、
----------
・Aさん宅(40平米 1LDKご夫婦2人)の場合
一回あたり1人約110円
70戸、1平米当たりの月額管理費は、137円×40平米=5,480円
5,480円÷25日(回)=約219円
219円÷2人分=1回約110円
・Bさん宅(70平米 3LDK 家族4人)の場合
一回あたり1人約1,200円
70戸、1平米当たりの月額管理費は、137円×70平米=9,590円
9,590円÷4日(回)=約2,398円
2,398円÷2人分=1回約1,200円
----------
という計算になる。なんとスポーツジム実質1回の使用料に約10倍もの金額
差が生じていたのだ。
もちろん、管理費はスポーツジムの運営だけに使われているわけではない
し、逆にBさん宅は、Aさん宅は使用しないキッズルームのヘビーユーザーか
もしれない。それぞれの事情がわからないこそ、不公平感が生まれ、隣人ト
ラブルに発展する可能性もあるというわけだ。
1階に住む住民がなぜエレベーターの保守費を払わなければいけないのか、
車を所有しない住民が機械式駐車場の維持費負担を強いられるのはなぜなのか。
こう言った「不公平論争」に近いものを、「ジムの実質使用費問題」に感じる。
こうした問題を解決するため、ジムやキッズルームの使用は1回いくらの使
用費制にするか、近年流行りの「サブスク」のように月額更新制にするという
のもひとつの方法論だ。
何が公平かという議論は尽きないし、最終的には管理組合での検討による判
断によるのだが、たとえば、管理費の支払い総額に応じて、スポーツジムなど
の使用回数を設定・制限するというのも選択肢のひとつかもしれない。
マンションでもSuicaのように、タッチするだけで開閉ができるICカードキ
ーの導入が増えている。このICキーで施設の使用回数を管理し、一定回数を超
えた世帯は、追加の使用料を管理費等として徴収するといった具合だ。
日本の多くのマンションでは、管理費等は、共用部分の使用頻度や部屋の
階数などによる違いはなく、広い部屋の所有者が多く負担していることが多い。
管理費等の設定額や運用方法は、管理組合で検討し、総会の決議を得られれ
ば変更できるということを忘れないで欲しい。
「現代ビジネス」
不動産市場で不気味な崩壊の足音が聞こえ始めている。日本は「土地本位制」
と言われるように、不動産は安全資産、効率の良い投資先と見なされ、資金調
達の際の担保評価も他の資産より有利に査定されてきた。バブル経済は不動産
投資によってもたらされ、バブル崩壊は不動産投資の規制によって引き起こさ
れた。
『週刊ポスト』(2月15日発売号)では、不動産バブル崩壊によって、不動産
資産を多く抱える一流企業が軒並みパニックに陥る恐怖のシナリオを報じてい
る。すでに国税庁は2020年1月時点の路線価を、大阪の繁華街で減額補正する
ことを発表し、大阪発のバブル崩壊が囁かれ始めている。
もちろん根底にあるのはコロナ不況だ。大坂では、近年は急拡大するインバ
ウンド需要によって経済が支えられてきた。キタやミナミの一部は中国人をは
じめとする外国人観光客によって潤い、それが地価を押し上げてきた。そのイ
ンバウンドがほぼゼロになったのだから、打撃が大きいのは当然だ。さらに、
コロナで日本人も繁華街の利用が急減し、企業は一切の会食を控えているとこ
ろが多い。
さらに、コロナに対応する「ニュー・ノーマル(新しい生活様式)」がバブ
ル崩壊を加速するという。企業はリモートワークを急速に進め、本社機能を含
めて「オフィス不要」の業務形態を模索している。出社が不要なら、社員もオ
フィスに近い都心のマンションをわざわざ買う必要はない。子育てや生活に便
利な郊外の手頃な物件を求めるようになれば、地価が下落するなかでのドーナ
ツ化現象という、これまでなかった動きが出るかもしれない。『不動産大暴落
がはじまった』などの著書がある不動産ジャーナリストの榊淳司氏が言う。
「情報化社会が進化した現在、ホワイトカラーのほとんどの業務はオフィス以
外の場所でもできることがコロナによって判明しました。リモートワークの普
及は、これまで業務の効率化を軽視してきたビジネス界に、ほぼ強制的に合理
化をもたらしたと言えます。人材派遣のパソナが本社を淡路島に移転すると決
めたことが象徴するように、今後は都心の一等地にオフィスを構える企業は劇
的に減るでしょう。その動きは、すでにオフィス空室率の上昇と賃料下落とし
て統計にも明確に表れています」
本来やるべき合理化・効率化が進むのは悪いことではないし、リモートワー
クのような働き方の多様化も企業、ビジネスマン双方にとって良いことだ。だ
からこそ、この流れはコロナが収束しても変わらない。産業構造そのものの変
化は受け入れるべきだが、気になるのは、その動きを見て日本の不動産市場を
虎視眈々と狙っている外国資本の動向だ。経済アナリストの森永卓郎氏が指摘
する。
「今の不動産バブルが崩壊すれば、都心の不動産価格は3分の1くらいまで下落
する可能性があると見ていますが、90年代のように、それが東京や大阪から全
国に波及することにはならないでしょう。なぜなら、今回のバブルでは地方は
もともと地価が上がっていないからです。逆に、大阪と同様に東京も値下がり
しておかしくないはずなのですが、それが下がっていない。それは外国人、と
りわけ中国人の土地購入意欲が高いからです。狙われる業界としては鉄道会社
などでしょう。コロナで乗客が減って経営が苦しい半面、超一等地の不動産を
豊富に持っています。ただし、中国人がそれらを高値で買った後にバブル崩壊
が本格化すれば、損するのは彼らになりますが」
中国人投資家が損害を被るかどうかは地価がどこで下げ止まるかによるだろう。
業績悪化で虎の子の不動産を売りたい企業は山ほどある。これからは空前の買い
手市場になるから、中国資本が安く仕入れ、市況がそれ以下にならずに持ちこた
えれば、彼らが大笑いするシナリオも当然あり得る。前出・榊氏は、東京では外
国人が買い支えることで大幅な地価下落は起きにくいと分析している。
「東京でバブル崩壊の影響を一番受けるのは銀座だと思いますが、実際には一等
地だから下がりにくい。路線価が下がっても、実際の取引価格はそれほど下がら
ないのではないかと見ています。
今後は、赤坂や池袋あたりの飲食店の入るビルが売りに出ると思いますが、その
買い手になるのは、おそらく中国人など外国資本でしょう。大手企業の自社ビル
売却もさらに増えそうですが、それらを買うのも中国系でしょうね」 都心の大
家はみんな中国人、という未来も現実になりそうな気配だ。
90年代のバブル崩壊では、日本企業が損を覚悟で底値で売り、それを買った欧米
のハゲタカ・ファンドが値上がりしてから売り抜けて大儲けした。今回はその役
回りを中国資本が演じ、またも日本の国富が海外に流出するだけなら、「いつか
来た道」である。
「NEWSポストセブン」
筆者は、1990年、22歳で不動産業界に入りました。90年といえば、まさに不動産バブル崩壊が始まった年であり、それまでの不動産ビジネスとは180度違う方向性が求められました。バブル崩壊にもかかわらず、友人4人と立ち上げた会社は、わずか5年余りで社員60人、年商10億円の企業に成長させることができました。 しかし、ちょうどバブル崩壊の時期とも重なって、筆者は、不動産投資に失敗して破綻していくお客様や住宅ローンの支払いに困っている人の窮状を目の当たりにしてきました。 大学教授や弁護士の先生にご協力いただいて設立した「一般社団法人 全日本任意売却支援協会」での筆者の経験からすると、たとえば次のような人がマイホームの購入に失敗してしまうことが多く、住まいが競売にかけられる、もしくは任意売却に至るのです。 ●住宅ローンの返済に無理がある人 長い間、任意売却を支援してきた筆者は、様々な人に話を聞く機会がありましたが、中でも印象的だったのは、金融機関の住宅ローン担当者の「住宅ローンで破綻する人で最も多いのは、頭金のない人です」という言葉でした。 不動産購入には物件価格だけではなく、不動産の仲介料や各種の税金など、様々な経費がかかります。「フラット35」や10割ローンといった国の政策を利用し、金融機関が物件価格の100%を融資してくれたとしても、自己資金がない人はそれでもまだ不足してしまうわけです。 結局、そうした諸経費もローンに頼らざるを得なくなり、資金計画に無理が生じると、ローン破綻してしまいがちになるということです。貯金がない、金銭感覚に問題がある、貯金できないような綱渡りの家計をやりくりしているようでは、そもそも返済は不可能でしょう。
●夫婦間のトラブルがある人
マイホームのローン破綻でもうひとつ目立つのは、離婚など夫婦間のトラブルが原因になって、破綻してしまうケースです。たとえば、夫がローンを払い続けるという条件で別居、離婚したものの、元夫がローンを滞納してくるケースが目立ちます。何も知らずに住み続けていた奥さんの元に、大量の督促状などが届くようになったり、最悪のケースでは、いきなり裁判所から競売の通知が来たり、挙げ句の果ては退去命令まで来るようになってしまいます。
いずれにしても、夫婦間のトラブルは住宅ローン破綻には大きな影響を与えます。我々も、相談には必ず奥さんを同伴するようにとお願いしています。様々な事例を見ていて感じるのは、世の中の大半の夫婦の主導権は奥さんが握っていること。その奥さんの了承がなくては、どんなトラブルも解決に向かわないということです。
●事業の失敗、解雇など収入源が不安な人 このケースも多いパターンです。自営業者が事業に失敗する、あるいは会社が倒産して失業してしまった。そんな人がローン破綻に陥るケースが多いのも事実です。特に、デフレ時代は事業に失敗した自営業者のローン破綻が目立ちました。 事業の羽振りが最も良い時点でマイホームを購入する人が多く、ピーク時の年収がずっと継続すると信じて、無理な資金計画を立ててしまうのが原因です。事業での資金繰りの悪化、そしてローンの返済、という具合にダブルで資金が不足することになり、あっという間に破綻に陥るケースも珍しくありません。 収益不動産にせよ、ワンルームマンションや自宅にせよ、ローンを組んだ以上は毎月きちんと返済していかないと、ローンの滞納になります。では、その住宅ローンを滞納するとどんな運命が待ち構えているのでしょうか。ここでは、ローンを滞納した後にどんな事態が待っているのかを紹介しておきましょう。
まずは、当然のことながらローンを滞納すると銀行から「督促」が入ります。封書などが郵送されてきますが、場合によっては直接訪問を受けて、ローンの返済をするように迫られます。それをさらに無視して滞納を続けると、金融機関にもよりますが、通常は3か月を超したあたりから、回収業務に入るところが出てきます。 回収業務は、当初は融資を担当した金融機関の支店の担当者であったりしますが、そのうち債権回収部門の別会社に移ります。債権回収部門というのは、取り立てを専門に行っている企業のことで、その金融機関の系列子会社になります。会社名も銀行名の後ろにxx債権回収会社とかxx保証会社という具合に、ひとめでその金融機関の系列会社であることが分かるはずです。 こうした債券回収会社は、その金融機関に属していた社員がほとんどで、なんとなく恐いイメージがあるかもしれませんが、実際のところは法的な手続きに沿って淡々と業務を推進していくイメージです。
金融機関によって、回収業務の方法が異なるとすれば回収のスピードです。銀行などにとって、ローンの滞納は放置すれば「不良債権」になってしまいます。不良債権の増加は、銀行経営にとっては自己資本比率の低下を意味し、経営上大きなマイナスとなり、バブル崩壊以後はそのスピードが求められるようになりました。 特に、都市銀行などは海外業務を展開している関係もあり、不良債権を放置しておくことができないシステムになっています。実際に、都市銀行などは住宅ローンを3か月間滞納すると、先に紹介した債権回収会社や保証会社に「ローン債権」そのものを移管してしまいます。 こうなってしまうと、「期限の利益の喪失」という名目で分割払いが認められなくなり、回収会社から「一括返済」を求められるようになります。分割で払えないのに、一括では払えるわけがありませんから、あとは借金をしている「債務者」とお金を貸している「債権者」という関係になります。 「保証会社に債権が移ったのですが、ここからローン減額などの交渉はできるでしょうか」といった相談をよく受けますが、この段階まで来ると極めて困難であり、残りは次の2つしか選択肢はなくなります。 (1)競売・・・債権者が裁判所に申請して、物件を強制的に競売にかけて債権処理してしまう方法です。 (2)任意売却・・・競売を避けて、債権者の了解を得て、競売以外の方法で売却する方法です。
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