住宅金融支援機構が公表しているデータによると、コロナ禍の現在、25人に
1人が住宅ローンの返済に問題を抱えていると分かっています。他人事ではな
い住宅ローン危機。ローンが払えなくなる大きな理由としては5つが挙げられ
ます。離婚、リストラ、病気…、ここでは残る2つについて、クラッチ不動産
株式会社・井上悠一氏が解説していきます。
80歳弱まで住宅ローンを返済…「老後破綻」の時代へ
●老後破綻 老後破綻が原因で相談に来られる方は数多くいます。 フラット35
を提供する住宅金融支援機構のデータから、2020年の利用者の住宅ローンを
完済する計画は平均73歳であり20年間で5歳上昇したことが分かりました(日
本経済新聞2020年10月5日朝刊)。晩婚化によって借入時点の平均年齢が高ま
ったことや、住宅価格の上昇に伴う借入額の上昇が要因となっているようです。
この記事が示すように、返済し終わる年齢が上昇しているため、従来のように
60歳で定年してあとはゆっくり年金暮らし、とはいかなくなっています。
この傾向は今後も続いていくと思われ、平均80歳弱まで住宅ローンを返済し
続けなければならない時代が到来すると思われます。そうすると、老後でも多
くの資金が必要になってくるため、蓄えのない人たちはたちまち破綻してしま
います。 破綻してしまう原因としては、(1)もともとの住宅ローンの計画が
破綻していた、(2)リスケにより破綻してしまった、が半々です。
(1)について、例えば45歳で35年の住宅ローンを組むことは、よほどの余裕
があり繰上返済の予定が濃厚である場合以外は、計画段階で破綻しているとい
わざるを得ません。65歳まで働いたとしても、80歳まで残り15年間、貯蓄と
年金で住宅ローンを支払っていく計画を当初から立てているということになり
ますが、常識的に考えて無理なことは明白です。
(2)については、例えば65歳までに返済する予定が、途中で支払いが厳しく
なってリスケをし、返済が10年延びたとします。そうすると75歳まで返済が延
びます。 しかし、もともと支払いが厳しくてリスケをしたのですから、年金暮
らしで貯蓄を切り崩しても返済が追い付かなくなってしまうのは当然のことです。
残念ながら、住宅ローンを組むときに資金計画を十分に練っていなかったといえ
ます。
このような場合には、法的手続を取ることを強くお勧めしています。今後の収
入が増える可能性が非常に低いなかで取り得る手段としては、支出を抑えるし
かありません。そのためには、自己破産などで免責許可(借金を帳消しにする
もの)を得て、住宅ローンなどの借入をなくす必要があります。
相談に来られる方は、「自己破産だけはしたくない」という方が多いです。
日本人には真面目な方が多く、特に世代が上の方ほど、「自己破産=悪」だと
思っている傾向にあります。
しかし、自己破産は何も恥ずべきことではありません。誰にでも起こり得るこ
とで、国が公に認めた制度です。有効活用してリスタートを図り、心に余裕の
ある生活を送るべきだと私は考えています。
「不動産投資の失敗」で自宅まで手放す羽目に…
●不動産投資の失敗 この問題に直面する方は、医者・公務員・看護師等に特に
多いです。
投資不動産ブームに乗って投資不動産会社に騙され、ワンルームや一棟収益マ
ンションを買わされた方が多くいます。これらの職業は、ローンが下りやすい
ので騙されるのです。 そういう方にターゲットを絞り、悪徳投資不動産会社は
営業をかけます。スルガ銀行の不正融資のように営業マンと銀行員がタッグを
組んで騙したという事例もあります。
最初はマイナス補填も2万円程度で済んでいたが、途中から10万円も補填しな
いといけなくなった収納代行会社が賃料を支払ってこなくなった、というトラ
ブルに巻き込まれる方もいます。
「投資に失敗したのなら、投資した不動産を売却すればよいのでは?」と思わ
れるかもしれませんが、そういう場合には、実際より高値で買わされており
いざ売却しようとすると数百万円のマイナスになるというような場合がほとん
どです。
本当にそんなうまみのある不動産なら、不動産会社は自分で購入し利益を得て
いるはずで、自分で購入しないということは、ハズレの物件をつかまされてい
る証拠なのです。それを知らずに放置していると、「不動産投資に失敗した」
では済まされない事態となります。 というのは、不動産投資の失敗は、自宅
の住宅ローンにも関係してくるのです。投資用不動産を任意売却し、信用情報
の記載をされたうえで代位弁済をされると、金融機関や債権者が自宅に仮差押
えや競売申立てをしてくる場合があります。
こうなると、自宅の住宅ローンはしっかり払っていたとしても、自宅の住宅
ローンも影響を受けて期限の利益を喪失する危険性があるのです。
このような場合には、投資用不動産だけではなく自宅の住宅ローンも含めて
トータルに相談し、問題解決を図る必要があります。投資用不動産を任意売
却することにより、自宅まで売却する必要生じてしまうのは、本末転倒です。
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