国家資格合格者や、大企業への新卒入社組など、一度レールに乗りさえすれば
高年収が約束されていたはずの“勝ち組”たち。だが、そんな彼らも長引く不況や、
新型コロナが追い打ちとなり、続々と高年収組から転落しているという。その崩
壊の実体とは――?
ローン破綻した人の悲惨な現場
思いきり殴りつけたのか大きくへこんだ壁、部屋の至るところに散乱するウイ
スキーの瓶……。
住宅ローンを支払えずに滞った債務者の物件を差し押さえる不動産執行「競売」
現場はあまりにも凄惨だ。
そうした現場の中でも近年、タワマンなど高年収者が住む“高めの物件”の取り
扱いが増えているという。今回、匿名を条件に競売の現場に携わるX氏に高年収
者の差し押さえ現場について話を聞いた。
「競売の現場にいると、荒れている部屋というのがほとんど。高年収者の部屋と
して印象的に多いのは、高級ウイスキーの瓶が散乱していたり、ゴルフのアイア
ンで床を叩きつけた跡がついていたり。
この前、差し押さえた大企業の中間管理職をしていた年収1000万円プレイヤー
のケースも仕事を失うストレスで酒に溺れ、床にアイアンでつけた無数の穴が開
いてました。今はアルコール依存症の専門医にかかって改善していますが、妻と
二人の娘はシェルターに避難するほど、酔うと凄まじく荒れたそうです」(X氏、
以下同)
1000万円プレイヤーならある程度の貯蓄もありそうだが…
「無理して購入したのか、タワマンの最上階と低層階の差し押さえは多いで
すね」(X氏)
ここ10年、銀行は融資の審査を緩くする一方、住宅ローンが払えない人を見限
るのも早くなっている。
1000万円プレイヤーなら、ある程度の貯蓄もありそうだが、現実は違うようだ。
「子供を私立に入れたり、分不相応な物件に住むケースが多いです。とても1000
万円世帯ではギリギリ。少し収入が減っただけで、すぐに破綻というケースがほと
んどですね。しかも、高年収に限って、プライドが邪魔をして自身の窮乏を周囲に
相談できません。私たちが差し押さえに入って初めて、家族が真実を知るというケ
ースもあります」
ただ、カネの切れ目は縁の切れ目か、X氏が高年収者の自宅に立ち入った時点で
大抵の家族は離散状態になっているという。 「これまでバリバリ働いていた人ほ
ど、職と家を失うことへの心理的ショックは大
きい。抜け殻のような状態になって、何の対処もしないまますみかを奪われる人
がほとんどですね」
家なき高年収者は今後も増えていきそうだ。
「週刊SRA! 編集部」